公衆トイレに、壁画で宿場町「粕壁宿」の面影を再生!
春日部市は、かつて「日光道中・粕壁宿」として栄えたまちです。今でも、春日部駅の東口地区には「粕壁(かすかべ)」という地名が残り、蔵づくりの建物やお寺が散在し、昭和初期を思わせる街並も残っています。しかしながら、近年の開発の波に押しやられ、マンションやビルに挟まれて、今や歯抜けで無惨な姿になっています。
そこで、始めたのが「日光道中・粕壁宿」景観再生プロジェクト。
・途切れてしまった宿場町の街並景観を、つなぎ合わせて再生していくこと。
・この地の歴史や宿場町の雰囲気を壁画で再現して、市民に「粕壁宿」を想起してもらうこと。
・まちに物語が生まれて、まち歩きが楽しくなり、人が集まってくるように誘導すること。
それらを、視覚的で共感しやすいデザインとアートで実現していこうというものです。
その第一弾がこの公衆トイレ。もともと蔵づくり風デザインのこの公衆トイレ。しかし、無機的で冷たいイメージで、利用客が少ないという問題を抱えていました。そこで、今回のチャームアップ工事の目標を二つ設定しました。 ・宿場町をイメージした壁画で、市民に旧宿場町を想起してもらい、まちの魅力を再認識してもらうこと。
・おしゃれで可愛い公衆トイレとして、市民に親しまれ利用客増大をめざすこと。
壁画のモチーフは、かつての船着き場(「上喜蔵河岸」と「下喜蔵河岸」)と古利根川周辺の風景。白い壁を塗り替え、色あせた黒御影風のタイルも油煙墨塗料で復元し、目地も再生しました。男子トイレと女子トイレの表示も、絵で江戸時代風にアレンジ。そして、冷たくて無機的だったステンレスの扉を白と黒の格子に、格子の木口と扉の取っ手はカラフルなフィルムでモダンでかわいらしい色に仕上げました。ちなみに色は、男がプリンセスブルー、女はラズベリー、そして車椅子はサンフラワーです。
制作中、通りかかる人々から「すごい」とか「懐かしくて楽しくなるね」など多くの声援をいただきました。何よりうれしかったのは、女子校生や若いカップルたちの「かわいい」とか「おしゃれで楽しい」という反応です。今まで見向きもしなかった人が、足を止めていきます。
高齢者の人々には、懐かしさと変わらないことの安堵感を。若い人々には、新鮮な驚きを。「伝統」と「革新」が調和したまちになっていけばいいなと思います。