外国人客をサプライズ空間でもてなす「龍」の壁画
JR恵比寿駅からほど近くの地下にある和食料理店です。通りの看板も誰もが見逃すような小さな木札看板があるのみ。まさに、隠れ家的な予約客主体のお店です。
まずは、オーナーと面談ヒアリングを行い、方向性と感度合わせから始めます。既存店なので、現状の空間演出から空気感やオーナーのめざす世界を感じ取りながらイメージ広げ、そして絞り込んでいきます。
店内には、どっしりとした壺型の花器にあしらわれたゴージャスなフラワーアレンジメント。そして、メインの壁面には幽玄な書画の大作。シックでシンプルなモダンな和の空間です。
今回施工するのは、屋外のテラス空間。屋外と言っても地下なので全面白いコンクリートの壁に囲まれて、天井は可動式のテントで、店内の完成度の高い空間とは裏腹にちょっと殺伐とした無機的なスペースです。
オーナーの狙いは、店内の落ち着いた和空間とは趣の違う開放的なもうひとつの和空間をつくって、その時の客の気分で使い分けをしてもらったり、パーティルームとして活用してもらうスペシャルな空間の創出です。
場所柄、外人客が多いとのことで、店内の書画のテイストを生かしながら、店内にはないストーリー性を出していくことにしました。できれば、外国人客のサプライズと写真スポットが狙えればバッチリです。
モチーフは、わかりやすくてサプライズ効果も抜群の水墨画風の「雲龍」です。テーブルレイアウトが日によって変更されるということも確認して、予め描いたラフスケッチを元に現場でアレンジしていきます。
メインテーブルの上方に龍の顔を、そしてサブテーブルの上方には龍の尻尾と龍の手に握られた宝珠をレイアウト。龍の顔は、店内のガラス越しに映画のスクリーンのように店内からも見えるので、店内の演出効果も狙えます。
外国人から龍の絵について質問された時のために、うんちくと口上も用意しました。
・龍は、中国の水墨画にも多く登場するが、日本の龍との違いは、爪の数が中国は5本に対して日本は3本である。玉(宝珠)を持っているのは、中国が多い。
・龍は天気を司る神とも言われ、雨雲を自由に操り雨を降らせる神で、店名の「雨後晴」にちなんで「龍」を選んだ理由である。
これで、店内のスタッフも自信たっぷりにおもてなしができますよね。
後記
にわか仕込みの壁画制作ではなく、このお店のロケーション、オーナーの世界観やこだわり、店内のゾーニング、スペースの位置づけ(ポジショニング)、テーブルのレイアウトや高さ、そしてその絵(デザイン)を選んだ理由、お客様に提供したい物語空間とサプライズのもてなしなど、上質なおもてなし空間を演出するのがビッグアートの「空間演出デザイン」です。
(感動空間プロデューサー 奥村 昇)
和食屋海鮮料理 雨後晴 【詳細データ】
- 日本料理店 雨後晴
- 東京・恵比寿
- 壁画