ウォールアートと壁画の違い
ウォールアート(Wall Art)というと、一般的には、「壁画」をイメージする人も多いかと思います。
しかし、ウォールアート=壁画ではありません。
「壁画」は、英語ではWall Painting(ウォールペインティング)とかMural(ミューラル)と呼ばれ、「壁に描かれた絵」のことを指します。
一方、ウォールアート(Wall Art)は「壁のアート」で、壁画もその一部ですが、壁画以外にも多くの技法があります。
例えば、特殊アート塗装、左官アート、レリーフアート、立体アート、モザイクアート、ステンドグラス、コラージュアート、ラッピングアート、光アートなど、その他にも壁を使ったアートは多数存在します。
それらの特定の技法にとらわれない広義の「壁のアート」をウォールアートと呼びます。
簡単に例えると、「東京は日本です」は間違いありませんが、「日本は東京です」は間違いであるのと同じです。
つまり、「壁画」はウォールアートですが、「ウォールアート」は壁画を含む多種多様な壁のアートの総称です。
ここでは、様々なウォールアートの種類をご紹介します。
壁画とは
壁画とは、「壁に描かれた絵」つまり「壁絵」のことです。
壁画は、絵画的技法で抽象から具象まで様々なイメージやメッセージを理性を超えて五感に訴求することができ、ウォールアートにおいても主役的な存在です。
明るさや楽しさ、安らぎなどのイメージで、人の気持ちを元気にしたり癒やしたり鼓舞したりすることができます。
企業のめざす世界観や物語的な異空間に、人を誘い没入させることもできます。
よりメッセージ性の高いビジュアルイメージで、人々の感情に働きかけ、行動変容を起こさせることもできます。
純粋アートとしての壁画もありますが、それはあまり多くありません。
多くはエンタメアートやビジネスアート、パブリックアートの分野で活用されています。
エンタメアートとは、テーマパークやエンタメ性の高いサービス空間で使われ、アートそのものが人々を楽しませるコンテンツとして利用されています。
ビジネスアートは、ブランディング、マーケティング、広報PR、採用活動、職場環境など、ボーダレスな課題解決に活用され、 企業の価値やメッセージを社内外に伝える役割を果たします。
特に壁画は、店舗や施設のアイキャッチャーやシンボルとして多く使われており、集客や話題づくり、ブランディングなどで高い効果が見込めます。
近年では、職場にアート空間をつくることで、職場ストレスを軽減したり、企業のビジョンや理念など企業アイデンティティを社内外に浸透させるオフィスアートが盛んに取り入れられられるようになりました。
パブリックアートとは、公共空間に設置されるアートで、人々の心を豊かにし、地域社会に潤いを与えたり、地域独自の歴史や文化を活かした景観づくりやまちづくりにも活用されています。
地方創生が急務となった近年、地域の魅力や資源を地域内外の人々に浸透させる手法として、壁画は今後大きな役割を果たすでしょう。
特殊アート塗装とは
壁画が絵に対して、特殊アート塗装とは、質感や模様に特化した表現技法です。
建築物を保護するする目的が主の一般塗装では色しか扱いませんが、特殊アート塗装では色はもちろん質感や模様などを自由自在に表現します。
一般的には、擬似塗装(Faux Finish)やエイジング塗装(Aging Paint)、グラデーション塗装などがあります。
擬似塗装とは、フォーフィニッシュ(Faux Finish)とも呼ばれ、大理石や木目、金属など様々な素材の質感や模様を塗装で本物そっくりに人工的に表現する特殊技法です。
エイジング塗装とは、壁や家具などの色褪せや汚れ、傷、錆など経年変化を表現する塗装技法を指します。
擬似塗装やエイジング塗装などは、近年、エンタメ空間でよく利用されていますが、今後はもっと斬新でユニークな塗装技法が開発されていくでしょう。
左官アートとは
塗装が刷毛やローラーなどを使った平面的な仕上げに対して、左官は鏝(こて)を使って土や漆喰、石灰岩、セメントなど質量感のある仕上げを行います。
使用する材料の質感の違いや凹凸のある模様を組み合わせて、様々な表現ができます。
レリーフアートとは
レリーフアートとは、平面を彫って起伏をつくる彫造という方法と平面に粘土などを盛り上げて形を作っていく塑造という方法があります。
立体アートは完全立体ですが、レリーフは本来、平面的な絵や模様を浮き彫りのように凹凸をつけて立体的に見せる半立体的な技法です。
左官のように平面の壁に材料を盛り上げていく方法や陶板アートやFRPなどで制作したレリーフを壁に貼り付ける方法があります。
立体アートとは
立体アート(立体造形)とは、高さ、幅、奥行きのある3次元の造形で、あらゆる方向から見ることができる作品のことです。
平面的な表現とは異なり、存在感が高く迫力があるのが特徴です。
立体アートは、一般的に彫刻とかオブジェと呼ばれています。
銅像や石像、木像などの彫刻が代表的ですが、商業施設などではFRPやモルタルその他様々な樹脂を使った造形物がよくみられます。
彫刻は、銅や石や木などの定型的な材料をベースに加工して行く伝統的な造形技法です。
それに対してオブジェは、素材そのものものが持つ美しさや存在感、質感を生かした造形作品で、自然がつくり出した流木などを活用したもの、廃材やスクラップ(廃品)など様々な素材を活用したものがあり、彫刻よりも多彩です。
立体アートは、3次元として作品が空間の中に存在するので、まわりの空間との掛け合いでインスタレーション効果を狙った特別な空間をつくり出すこともできます。
モザイクアートとは
モザイクアートとは、大理石やガラス、タイル、貝殻など様々な素材の小片を貼り合わせて絵や模様などを表現する技法です。
遠くからみると絵や図案に見えますが、近寄ってみると小片のひとつひとつの形や質感を味わうことができます。
ステンドグラスとは
ステンドグラスとは、色ガラスを組み合わせて絵や模様を表現し、窓などに設置して、光を透過させることで美しい色彩を味わえるアート技法です。
光の変化によって色合いが変化する絵や模様を楽しむこともできますし、壁面に映った光と色彩がつくりだす華やかで幻想的な空間を楽しむこともできます。
コラージュアートとは
コラージュアートとは、写真や絵、新聞・雑誌など様々な素材を切り抜いて貼り合わせる技法です。
紙や布などシートや平面的な素材を使った作品が一般的ですが、木や金属、廃材やスクラップなどを立体物を貼ったユニークな作品など多種多様です。
ラッピングアートとは
ラッピングアートとは、一般的に、デザインを施されたフィルムやシートで建物や車を覆う技法をいいます。
変わったところでは、フランスのカトリーヌ・フェッフさんの作品のように、建物全体を布で覆って建物自体をオブジェ作品に仕上げるといったユニークなものもあります。
光アートとは
光アートとは、光を利用して表現するアート技法です。
壁に光を当てて色とりどりの光を組み合わせるライティング技法、ネオンやLEDなどでビジュアル表現する技法、光の反射や透過、屈折を利用した技法、影を利用した技法など様々です。
近年では、映像や画像を建物の表面に投影するプロジェクションマッピングが注目されています。
壁をアートする手法は多種多彩に広がる
以上で述べたように壁をアートする手法は実に多種多彩です。
それら全体を指してウォールアートと呼びます。
壁画アートは、ウォールアートの中で絵画的な手法の特化したものといえます。
敢えてウォールアートと壁画アートを厳密に定義するのは、壁の装飾、演出の技法はたくさん存在していて、もっともっと進化・発展して欲しいという願いからです。
「空間演出デザイン」としてのウォールアート
ビッグアートでは、創業当初から「壁画」を絵画の延長とはとらえていませんでした。
当初からめざしたものは、「壁画」は「環境アート」「空間アート」であり、「場の空気感をつくり出すアート」つまり「空間演出デザイン」の一環として取り組んできました。
そのため、当初は「壁画」からスタートしたものの、次第に「特殊アート塗装」や「左官アート」「レリーフアート」「立体アート」なども自然に取り入れるようになりました。
壁画会社でスタートしたから壁画しか手がけないというのではなく、与えられた壁や空間に課せられた目的や達成したい目標に合わせて、最大限の成果を出すために必然的に「壁画」という枠組みからボーダレスに広がってきたというのが実感です。
壁面を様々なアートで装飾して空間イメージを変革し、その場所(空間)の目的やゴールに向けて人々の五感に働きかけ、人の気分を誘導したり醸成していくこと。
それこそが、ビッグアートがめざす「空間演出デザイン」「感動空間プロデュース」の真髄です。
ウォールアートを超えた感動空間づくり
ビッグアートの展開する「空間演出デザイン」「感動空間プロデュース」は、あくまでウォールアートが軸ですが、今後は「壁から空間へ」と表現領域が広がり、「音」「匂い」「触覚」や登場人物・動物の「パフォーマンス」までも加わっていくと思われます。
(感動空間プロデューサー 奥村 昇)